あと5日


[05]涙


カットを始めたものの…聞きたい事も聞けないし、どこで会ったか思い出せないしで会話が出来ない。
こんなに会話が無いのは初めてだろう。
「やっぱり…優しいんですね、太陽さんは。」
先に口を開いたのは女の子の方だった。
「…覚えてないですか?私の事…松岡楓っていうんですけど。」
松岡って…由紀子の旧姓だよな?楓…あっ!
「由紀子のいとこの楓ちゃんか!」
すごく説明的なセリフになってしまった。
「思い出してくれましたか?…結婚式と由紀姉のお葬式で会ったぐらいですもんね。」
由紀子とは歳の離れたいとこらしい。
「聞きたい事があるなら聞いてもいいですよ。」
そう言うなら…。
「…この髪…誰かに切られたの?」
「まぁ…。…イジメられてるんですよね、学校で。髪の毛切られて、たまらず学校飛び出しちゃって。」
楓は淋しく微笑んでそう言った。
「いつから…?」
「高校2年なってからです。今年入ってからですね…。きっかけとかは無かったですけど…。」
そうだったのか…確かに結婚式で会った時はもっと明るい雰囲気の娘だった気もする。
「…もうすごく辛くて…死にたいって思う時もあります。隕石が落ちて、地球が無くなったらいいのに…って。」
そこまで言うと楓の瞳から涙が溢れた。
地球が無くなったら…?
俺の心に複雑な感情がこみ上げる。




[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.