あと5日


[03]心


そんな事を言われると裕太の笑顔が頭の中を巡る。
「でも…ですね、こんなのわがままだって分かってるんですけど…僕の父が命がけで守ったこの地球を守ってほしいんです。」
「なるほどな…。」
「父は自分の命を懸けて僕らを守ってくれました。それがたった20年で壊されるなんて…悔しいんです。」
俺の心が少し揺れた。
「…すいません。急にこんな話をしてしまって。」
「いや…聞けて良かったよ。ありがとう。」
この人達に礼を言うなんて初めてだ。
時計を見るともう昼頃だった。
「すいません、そろそろ仕事なんで…。」
俺がそう言うとカイは「あ、すいません。」
と短く返事をして立ち上がった。
「あ、最後に…隕石を止めに行く場合、2日前には地球を発たなければいけないんです。なので、結論は遅くても明後日にお願いします。」
「分かったよ。」
最後にそう告げてカイは去っていった。
「弱ったな…。」
独りになってそう呟く。
本当に…とんだ話を聞いてしまったもんだ。
カイのわがまま…本当にわがままな話だけど、否定できない話だ。
俺の心が初めて少し動いた。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.