番外編〜楓〜中編


[04]家族


3人の間に沈黙が広がったままだ。
部屋の中に小さく響くのは私がすすり泣く音だけだった。
「…楓…。」
やっと誰かの言葉が鳴り始める。
その声は母親のもので、母親は涙を流し始めた。
「ごめん…ごめんね、楓…。」
しきりに「ごめん」という言葉を繰り返す。
「楓の言う通りなの…私は…楓がイジメられてるんじゃないかって思ってたのに…何も言ってあげられなかった。…本当にごめんなさい。」
母親が泣きながら私に謝る姿を見て、私の涙が更に出てきた。
「お母さん…。」
そんな2人の姿を見てか父親も言葉を発し始めた。
「実は…父さんも色んな事を母さんに聞いてね。楓のイジメの事を何となく知っていたんだ…。それなのに何も出来なくて…本当に悪かった。こんな親で…。」
父親は涙を堪えながら私に頭を下げた。
「…お父さん…。」
私の涙はもう止まらなくなってしまった。
「…もう良いよ。ありがとう…私こそ、ずっと言えなくて…。」
私は両親に向かって頭を下げた。
そして、母親と抱き合って泣いた。
久し振りに触れた母親は温かく、私はやっと温かい家族を見つめ直す事が出来た。




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