番外編〜楓〜前編


[09]死


それから何ヶ月かが過ぎていった。
私は相変わらずイジメられたままで、両親も先生も…皆が気付かない振りを決めこんでいた。
そして、イジメはエスカレートするばかり。
私の精神も身体も悲鳴を上げていたが、逃げる事は許されなかった。
私にもう立ち向かう勇気と強気な考えは無くなっていて、ただ黙って耐える事しか出来なくなっていた。
そして、いつしか…
死を想う様になっていた。

そんな、ある日の事。
「行ってきます…。」
いつもの様に無表情のまま学校へ向かう。
私はいつしか…笑顔を忘れていた。

学校に着いて、席に着くといつもの様に周りを取り囲まれる。
「おはよう、松岡さん。今日も学校来たの?しぶといね。」
和佳がそう言うと、皆が私の腕を押さえつけた。
「痛っ…何…?」
痛みに顔をしかめると、和佳が満面の笑みでハサミを手にした。
「…私がカットしてあげるよ。あんたの髪。」
そう言いながら私の髪の毛を乱暴に掴む。
「や…やだっ!やめてよ!お願いだからっ…。」
私のお願いなど届くはずもなく、ジャキッという音と共に黒い髪の毛が床に散らばる。
周りの久美達はただ笑いながら、それを見ていた――。




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