番外編〜楓〜前編


[10]美容室


「あースッキリした。次は何する!?」
和佳が笑いながら皆にそう言う。
私は急に立ち上がった。
「もういい加減にしてよ!私は和佳達のおもちゃなんかじゃないんだよ?!」
泣きながらそう叫ぶ。
あまりに大きな私の声に周りの皆は少し呆然としていた。
「もう私なんかに構わないでよ!」
そう言い残して私は教室から全力疾走で逃げ出した。

行く宛もなく、ふらふらと街を歩く。
もう涙も乾いてしまい、私の心は空っぽだった。
その時、一件の美容室が目に入った。
そして、その中に1人いた見覚えのある美容師さんにも。
私は吸い込まれる様にその中に入って行った。

「いらっしゃいませ。」
笑顔で迎えてくれる美容師さんの顔をちゃんと確認して、予想通りの人物で安心する。
やっぱりだ…由紀姉の1番大切な人。
「髪…整えてもらえますか?」
小さな声で私がそう言うと、太陽さんは少し眉をひそめながら
「分かりました。席へどうぞ。」
と、私を席へ誘導した。




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