番外編〜楓〜前編


[08]親


昼休みが終わって先生が来ると、また皆は何事もなかった様に座る。
私も涙を隠す様にうつ向いたまま、授業を受けた。

全ての授業が終わると、私は昨日の様な目に遭うのを避ける為にすぐに帰った。
とにかく早く学校から遠ざかりたくてダッシュで家に向かう。
もう両親に告げてしまおうか…。
そう思う程、私の精神は追い込まれていた。

家に着いた頃には、もう完全に息が切れていた。
「ただいま…。」
いつもより小さな声で帰宅を告げる。
「おかえり。早かったわね。」
母親はまだ何も気づいていない様だ。
「…うん。」
私の元気無さそうな声に反応したのか、母親が慌てた様に私の方を向く。
「…どうしたの?その傷と汚れ…。」
イジメのせいで私の体には複数の傷がついていた。
「…うん、ちょっと色々…ね。」
私がそう言うと、母親は眉をひそめながらも
「そう。」
と軽くあしらった。
私は泣きそうになるのを堪えて、自分の部屋に上がっていった。
親までも私のイジメに気付かない振りするんだ…。
悲しくてしょうがなかった。



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