番外編〜楓〜前編


[05]戦い


次の日が来てしまった。
「夜のままで良かったのにな…。」
学校行かなくてすむのに…行きたくないよ…。
そんな気持ちが頭の中を巡って、ため息が漏れる。
「楓ー!早くしないと遅刻するわよ!?」
何も知らない母親はいつもの様に私を起こす。
「うん、今行く!」
今日はまだ負けてる場合じゃない。何とか学校に行かないと…。
重い腰を起こし、制服に着替え始める。

「じゃあ、行って来ます。」
いつもと同じ通学路も少し暗く見えてしまう。
周りを通る生徒達も皆、私の事を睨んでいるようで…。
怖くて怖くて仕方がなくて、少しだけ早足で歩いた。
学校に着いて下駄箱を開けると「死ね」と書いた紙が入っていた。
「はぁ…。」
もう大分諦めもついてしまって近くのゴミ箱に丸めて捨てた。
教室に私が入ると、案の定静かになってしまって、うつ向きながら席に着いた。
「松岡さん、おはよう。」
和佳が私の髪を掴みながら挨拶してくる。
「今日もちゃんと学校来たんだ…偉いね。」
そう言いながらギュッと引っ張られ、顔をしかめる。
それを見ている周りのクラスメイトはクスクス笑うだけで何もしてくれない。

やっぱりイジメって淋しい戦いなんだ…。




[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.