番外編〜楓〜前編


[02]独り


「じゃ、昼休み終わっちゃうから先に帰るね?」
そんな言葉を残して、女子達は教室に帰って行った。
「冷たっ…。」
かけられた水が髪をつたって床に落ちる。
その場に呆然と立ちすくみながらも
「私、イジメられるんだな…これから。」
と変に冷静に、頭の中では自分の置かれた状況を理解していた。

保健室で先生に適当な嘘をついて着替えを借りて、教室に戻った。
もう5時間目は終わっていて休み時間だというのに、私が教室に入るとやけに静かになった。
「…楓…あのね…。」
1番仲の良い親友の久美が私の前に出て来る。
その後ろではさっきの女子も含む、クラスの皆が楽しそうにこっちを見ていた。
「…久美?どうしたの、何?」
よく見ると、久美の指先が微かに震えていた。
これはただ事ではないと察したその時だった。
「私もう楓の事親友だとか思ってないから!」
と、久美に平手打ちをくらった。
後ろでは色んな笑い声がしていて、久美はその笑い声の方に帰って行った。
私の頭の中では久美の言葉だけがぐるぐる廻っていて、とにかく混乱していた。
そして、何とか1つの答えが出せた。
「私はもう独りなんだ」
と…。




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