〜第3章〜 清奈


[07]2007年5月19日 朝10時3分


バスは、目的地【有山シーサイドパーク】に向かって走っている。

有山は五月原から車で約1時間ちょっとでつく。比較的規模の大きい港町で、僕たちが向かっているのは海辺にある大きな公園だ。

さて、時刻はまもなく10時になるというところで、

「1年5組の諸君!まもなく時刻は10時になるわ!」

瀬戸さんの声が、バスガイドのマイクを通して聞こえた。

「10時…といえば!何をする時間かしら〜?」

さあ……。何だ?

「そう!ビンゴゲームよ!」

瀬戸さん、別に10時じゃなくてもビンゴゲームは出来ると思います。

「というわけで、今から全員にカードを配るわね!」

全員強制参加のビンゴゲームが始まるようだ。

「悠、ビンゴゲームってなに?」

「えっとな…今カードが配られるから…。」

前からビンゴカードが配られた。


「数字が書いてあるだろう。今から瀬戸さんが数字を言っていくから、言われた数字がそのカードに書いてあったら穴を空ける。そしてその穴が、縦か横か斜めに揃ったらビンゴ。瀬戸さんが用意している景品がもらえる。」

「言われる数字に穴を空けるだけ?駆け引きも何もない只の運試しじゃない。」

まあ…そうだな。
「景品は16個あるわ。先着16名様限定よ。じゃ、一つずつ紹介していくわね。」

ま…どうせ対したものじゃないだろうな。

「有山シーサイドパークのマスコットキャラクターのキーホルダーと、ドクターグリップと、何か変な置物と、トランプと…。」

まあ…聞く感じ一番欲しいのはドクターグリップかな。

「あと…海色リボン!」


なるほど、青いリボンか。

「この景品は全部、有山シーサイドパーク限定品よ。この世界で有山シーサイドパークでしか買えないすばらしい商品が勢揃い!ってなわけで早速始めるわ!」





「真ん中のこれは?」

「それは最初から空けてもいい。」

「分かった。」

僕と清奈がそんな会話を交して、瀬戸さんの声が聞こえてきた。


「最初は…。」

わざわざ手動のビンゴマシーンまで用意してあるらしい。ガラガラと福引きのような音がマイク越しに聞こえた。

「縁起が良いわねラッキー7!7番よ!」

僕とさくらちゃんは穴を空けたが、清奈は無いらしい。



さて、次々と瀬戸さんが数字を言って、ビンゴも出始めた。

僕は7つ穴が空いているが、まだリーチに結びつかない。
一方さくらちゃんは2つもリーチを作っている。

「あ…これで3つ目のリーチですね。」

にっこり微笑み、とても嬉しそうだ。さくらちゃん…あぁ……。
後が怖いけど、さくらちゃんの隣で良かった…。女神の笑顔をお目にかかれるのだからな。

一方…清奈は、

まだ2つしか空いていない。いや、真ん中の穴を含むから空いたのは1つだけだ。

そのせいか、

すこぶる機嫌が悪そうだ。


「このカード、私に恨みでもあるんじゃないかしら?」

「いや、それはただ運が悪かったってだけだろ。」

「あのね、なんでこう20が空いてほしい時に限って19とか21とかが出るわけ?」

あるある。
ビンゴゲームが始まったら一人はいるよな。19って言われて、「20だったらビンゴだったのに〜。」って言う人が。


そろそろゲームも終盤にさしかかり、僕の欲しいドクターグリップもあっさり取られ、ビンゴのやる気が失せてきたというところで

清奈が

「ちょっと交換しなさい。」

バッと、早業で僕と清奈のカードが入れ換わる。

「おい!それはルールに反しているぞ!」

清奈に言おうとしたその時

「次は20番よ!」

「あ、20じゃないか。」

僕は穴を空けた。

「ちょっと待って、よく考えたら…。」

再び早業でカードを入れ換える。

「もうあれだけはずれの数字が出たんだから、そろそろこのカードも穴が空き始めるはずだよね。」

まあ…そう考えても問題ないだろう。

しかし、商品はあと一つ。

例の海色リボンだ。

「あれ、欲しいのか?」

「………。」

無視?
いや、これは多分。
欲しいけど、お前には悟られたくないってことか?
ただ単に負けず嫌いなだけか?



「あの…相沢くん。」
急に小さな声でさくらちゃんが言った。

「あ、何でしょうさく…空川さん?」

「私のカードと、相沢くんの…交換しませんか?」

「えっ?何でまた?」

「私は…あのリボンを長峰さんにプレゼントしたいんです。あと…長峰さんも私からより、相沢くんからのほうが喜ぶでしょうし…。」

「うぇえ!それってどういうことだ!?」

「相沢くん…。私も同じ女の子ですから、なんとなく分かります。きっと長峰さんは…相沢くんのこと…気になっていると思いますよ。」

男子には分からない、女子だけが意思疎通できるテレパシーって言うのがあるのだろうか?それ本当ですか?さくらちゃん。そして清奈…

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