〜第3章〜 清奈


[02]朝8時30分


「私もその子に会った。私達を敵視していないから、特に問題無いでしょ。」

「…そっか。それなら…いいけど。」

くそ!会話が終わってしまうってーの!

「……あぁ!そうだ…昨日――」

「何やってんだ?」






急に第三者の声がした。

その声は日常的によく聞いているから誰かすぐに分かった。
なぜ今日に限って早く来る?
ふっくん…。

「………邪魔っぽいから消えるわ。」


…………………。


ちょっと待ってくれ!


僕は、ふっくんが抱いているであろう状況的不利な誤解を解くために追いかけた。

教室からかなり遠くに離れた廊下の片隅でふっくんに追い付いた。



「ふっくん!ちょっといいか…?」

「いいとも!気が済むまでとことん聞いてやろうじゃないか!悠にぃよ!貴様、この世の男全てを出し抜いたその罪は重いぞ!どこまで行ったんだ!?どこまで来ちゃったんだ!?ヤったのか!?どうなんだ!?」

ふっくんのセリフの語尾に全てビックリマークがつきそうな口調で僕に迫った。

「違う違う。そんなのじゃないんだって!てか落ち着けよ!」

「落ち着いてられっかー!お前毎朝二人きりなのか!?」
…………。


否定できないな。


「やっぱりそうなんじゃねえか!さくらちゃんと二股か?毎朝あの長峰さんと二人きりってお前……おもいっきりフラグだってんじゃねえか!」

フラグっておい…。

完全に誤解してくれてるな。そりゃあもうこちらがかなり困るほど。

「だから…な?毎朝せ…長峰さんと一緒にいた事は認めましょう!えぇ認めますよ!?でも僕は絶対にお前が思っているような関係にはなってない!断じて言うが…なってないから!」

「……本当かぁ?」

まだ信じてくれていないらしい。

「だからさぁ…。」



「えぇ。相沢君の言うとおりね。」

「え?」

僕とふっくんが同時に言って後ろを振り向いた。




いつのまにいたんだよ…清奈。


「私は別にこいつのことなんか【全く】好きじゃないわ…分かったわね?二人とも。」

そういって固まってる僕達二人の横をスタスタと歩いていった。

清奈、フォローは非常にありがたいんだが、

【全く】っていう1文節を強調しすぎじゃないか?
なんか悲しくなる…。

べ…別にいいだろっ
ちょっとぐらい期待してもさぁ。


「あと。」

清奈が振り返って僕達の方を向いた。
「お前達の会話、校舎じゅうに筒抜けよ。」

そのまま歩いていった。
あぁ…一月ぶりに見たな。僕が始めて時を渡った時に見せた…あの可哀想な人を見ているような軽蔑の視線が…。







授業が始まった。
一時間目から憂鬱な授業だ。なぜなら、抜き打ちテストが返却されるからだ!

先生が事前に予告しないでやるテストなんて、ベタな学園漫画だけのモノだと思っていたんだが…高校に入ったらリアルにそういうものがあるんだな…。

朝8時30分…

「テストを返すぞ〜。」

英語の先生が言った。
男の英語の先生って珍しくないか?ジェンダーの倫理的にタブーかもしれないがそれはおいといて…。しかも、その先生は英語を喋りすぎたのか知らないが、日本語が変に聞こえる。この学校は変わった先生が多すぎるぞ。美術の先生とか変人だし…。

「おい、相沢、取りにこいよ。」

【取りにこい】
アクセントは「り」だ。
はいこのアクセントはテストに出ま〜す。


というわけでテストの点を見るわけだが、
ふぅ…危うくリアルのび太くんになるところだった……。

このテストは、4、5文のまとまった文章を日本語訳するというものだ。
文法は中学範囲みたいだが、知らない英単語がたくさん出てきた。物理的に知らない単語が入っている文章は訳せないのが当たり前だ。
「知らない単語は文脈から推測すれば意味がとれますから、まあ8割程取れたらEXCELLENTでしょうかね〜〜。」

先生は8割がたをお望みか。僕はその半分も取れてないわけだが。

「おやおや悠にぃ。そのうかない顔は、悪かったのかな?かな?」

また始まった。

「俺は!何と!9割だ!」

誰も聞いてないから。
でも、
レベル高っ!

「これで俺はこのクラスの中でも成績はAクラスに入るであろう!」

はいはいそうですか。
だがな、ふっくん。
お前にも越えられない壁がある。
そう…美少女優等生、さくらちゃんだ!

「俺は!何と!さくらちゃんに1点差でーーー!」

負けたんだろ。

「勝ったんだ!」





…………………チッ。
心の中で舌うちしてやりましたよ。

あとこいつに勝ってそうな人は……。

僕はチラチラと清奈の方を見た。
その視線に気づいた清奈は、机の中から答案を取りだし、
点が書いてある部分だけ見せた。







神発見。

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