〜第3章〜 清奈


[15]2007年5月19日 昼1時40分


「うるさい。お前が口だしするんじゃない。」

「罠だって分かっているんだろ!?なのになんで清奈1人だけなんだよ!」

「へえ?じゃあお前は戦えるわけ?」

「当たり前だろ!」

清奈は鼻で笑う。

「グレームドゥーブルのあの一件だけで自分は戦えると思っているわけね。前のあれは戦いとは言わないの。たまたま死ななかったからっていい気になってるわ。」

「それでもダメだ!確かに僕は何もできない。でも1人よりも2人の方がいいだろう!」

「…………。」

清奈は、





僕を睨んで言った。



「はっきり言って、邪魔なの、お前はね。」

僕に容赦なく言葉を叩き付ける。

「お前に何ができるわけ?正直戦力外よ。」







清奈の言ったこの言葉は、暴力なのだろうか?


否。


清奈の言っていることは正しい。ただ僕に現実を知らせただけだ。
僕は清奈の役にたっているのか?
僕はネブラと戦えるのか?

清奈を守れるぐらい、自分は強いのか?

どの質問も、「はい」と答えられない。その僕の情けなさに、ただ…。


「分かった?お前は私につく必要は無い。お前は無用の長物、ただのお荷物よ。」

僕は……。


「お〜い、悠にぃ。」

はっとふっくんの言葉で我に返った。

「長峰さんに何大声で話しているんだよ。」

げっ!
聞こえていたか…!

「ふっくん…もしかして、聞いてた?」

「いや、ドッジボールが盛り上がってるせいで聞こえなかったから安心しな。いちいちそんなことを聞くということは…。」

なんだよその目は。
はいはい。






「次、第7試合よ!選手はコートに入って。」

さあ、いよいよか。

『負けることなんて許さないから』

負けたら後が怖いなあ…。

じゃんけんで僕達は先攻になった。僕が中に入り、清奈は外に回る。

試合開始のホイッスルが鳴った。
僕は持っていたボールを清奈のいる外野へと転がした。

それを掴む清奈。

相手は佐藤、泉ペア。

吹奏楽部の泉さんはいいとして、佐藤は野球部だ。スポーツがりの典型的な野球少年。確かポジションはピッチャー……。

腕力はかなりのものだろう。

相手は中に佐藤、外に泉さんだ。

僕は清奈がいきなり仕掛けるかと思ったが、清奈は山なりのボールで僕に投げる。

行くぞ!

僕は佐藤に向かいおもいっきり投げる!

いいボールを投げたと思ったが…!
見事に両手でキャッチする。威力は平均よりかは強かったのに…。

これで相手のターン。

僕の足元めがけて、その強肩で投げつける!

くっ!!

なんとか避けた。

泉さんにキャッチ出来るはずもなかったので、コートから遥か遠くにボールが飛んでいった。慌てて取りにいく泉さん。

その間に清奈は僕の所に行く。そして耳元で囁いた。

「相手は佐藤くんを倒せばこちらの勝ちのようなもの。真っ向勝負じゃ勝つのは難しい。」

「じゃあどうすればいい?」

「すばやくパスを回して惑わせる。私が目で指示するわ。さっきみたいに無理に倒そうとしないでよね。」

「…よし、分かった。」




泉さんが戻り、試合再開。

泉さんが山なりにボールを投げるが、ボールが風で軌道が狂い、僕の頭上へ。

清奈は右寄りの位置に立っている。僕も右寄りだ。
当然ながら、相手は左に寄る。
僕は清奈にバスを渡す。
それを受け止め、再び返す清奈。
もう一度ボールを往復させる。

すると、

清奈の目が左を見るのが分かる。
どうやら決めに行くらしい。

清奈が何かを喋っている。口の形を見ると…。

ひ だ り へ な げ ろ。

僕は清奈の指示通りに
左へ投げた。

清奈は

一瞬でコートの左端に移動する。

「やべっ!」

そう言った佐藤は清奈の予想外の動きで後ろを向き清奈と対峙。

そして清奈は
僕の投げたボールを片手でキャッチし、そのままボールを腰の周りに一回転させ、そのままアクロバティックにボールを投げる!

「うわ!」

清奈の左脇腹辺りから飛んだボール。またも清奈に遊ばれた佐藤はあっけなく撃沈。

その後の泉さんも、僕が左手であっけなくアウト。

「勝者!相沢、長峰ペアー!」

拍手が起こる。
瀬戸さんが赤マジックでトーナメント表に線を書きいれた。



さて、その後の試合結果を総括すると

ふっくんは花粉症により1回戦敗退(思えば花粉症なのにさくらちゃんや清奈の間にいるときは、普通の声だったな)

さくらちゃんは、男子が手加減してくれたお陰で(味方の方の女子は…ハハハ)見事勝ちあがった。

そして、優勝候補は…

一平と瀬戸さんのペアだ。

事実上の最強コンビ。
一平は、1年4組の中では最強クラスの運動神経。

そして、委員長の瀬戸さんも運動神経は清奈とほぼ互角ときた。

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