鋼の錬金術師《長編》


[09]太陽と月*G





「ハボックさん?大丈夫ですか?」





先程、
灰皿を差し出してきた
看護婦だった。




「なにが??」





ロイが
乱暴に出ていったのを
目撃でもしたのだろう。







「何か言い争っていたみたいだったから・・・」





「あぁ、何でもないです」






作り笑いを
浮かべてやると
目の前の女性は
嬉しそうに笑う。




媚びるような
視線を俺に向け、
近くへ寄ってくる。







「それにしてもひどいわねぇ。名誉ある負傷に腹を立てて怒鳴るなんて・・・」












「・・・は?」





まったく意味がわからなかった。





何を勘違いしてやがんだ、
この女・・・








「隠さなくてもいいわ。可哀相に。体を張ってそのあげく上司にも見捨てられるなんて」






「・・・・」








どうやら、
ケガが原因で

俺が怒鳴られたと
思い込んでいるようだった。






煙草、すいてぇな・・・







何故かすごく、
イライラいていた。









「大丈夫、私はハボックさんの味方ですから・・・」









うるせぇ・・・










「あなたもあんな上司から離れられてせいせいしたんじゃない?」







看護婦の言葉が
俺の神経を逆なでする。





あの人を悪く言うな・・・







「あの方って女たらしで有名な方よね?私には信じられないわぁ。どちらかというとあなたの方が、好みかしら」





やけに看護婦の顔が近い。




それが
気にならないほど
俺は機嫌が
悪くなっていた。






・・・何も、知らないくせに・・・






もう、
女の声は聞こえなかった。




只ただ、
あの人の、
愛しい人の悪口を
言われるのが
許せなかった。





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