鋼の錬金術師《長編》


[04]太陽と月*B




俺はぼやけている視界が
気に食わなくて


ごしごしと涙を拭った。


ロイは眉をハの字に

下げながらたじろいでいた。





「・・・なんで、きたんスか」





俺が口を開くと、
彼はびくっと肩を震わせた。




「え・・・あ、来ちゃ、まずかったか・・・?」




俺が怒っているとでも
思ったのだろう。



怯えた顔で

恐る恐る俺の顔を
覗き込んでくる。




「大佐・・・そんな怖がらんでくださいよ」




そういいつつ笑顔をつくると、


ロイは安堵の表情を浮かべた。





・・・可愛い顔して・・・





手招きをし、
ロイを近くへ呼ぶ。




「?」



無防備なその唇に
俺は自らを重ねた。




「・・・んっ・・ハボ・・」






ロイが甘い吐息を漏らす。








「あんたが悪いんスよ、のこのこと俺のとこに来るから・・・」







そういいながら、
俺はロイの顎を引き寄せ、
舌を絡める。






「・・ん、で・・・ふっ・・ぁ」








抗議の言葉を
唱えようとするが、

俺はそれを許さない。



ロイがカクンっと床に崩れた。




名残惜しそうに
透明な糸を引き、
顔が離れる。








「忘れようと、思ったのに・・・」










ボソリと
呟いた言葉は

トロンと
瞳を潤ませているロイには
聞かれなかったようだ。








「ハボッ、ク・・・」








何かを
求めているような、瞳。



俺には
手に取るようにわかる。



だが、
素直に望みを
叶えてやる訳もない。





「なんスか?」





ニヤリと
笑いながら聞き返す。



ロイはもじもじと
視線を泳がす。



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