歪みの国のアリス《長編》


[06]Black Sun《黒い太陽》E





「もうじきアリスが目を醒ます」




・・・はい、と
相槌を打った私は

猫を置いて歩き出した。




「君が羨ましいよ・・・」






猫の言葉にピタリと
歩みが止とまり、
身体が強張るのがわかった。














「私は・・・
貴方の方が羨ましいですよ・・・」




拳を固く握り締める。







「導く者はいつもアリスのそばに・・・。番人は、あまり関われないんですよ」






「・・・」






「私はっ、いつもアリスのそばにいる貴方が羨ましいっ・・・」



嫌な感情ばかりが、
私を蝕<ムシバ>んでいく。



猫は悪くない。




わかっているのだ。



















彼だって、









目の前にアリスがいるのに、












手を出せないんだから。













私なんかより、


はるかに辛いはずだ。















だが、

一度飛び出してしまった感情は、
止まるところを知らず、
更に勢いを増す。





「いつも貴方ばかり!アリスの声を聞くのも!アリスを護ってあげるのも!」



一息ついて、私はまた言葉を発する。



「私は・・・未だにアリスを越えられない・・・」







「・・・」








「何故だかわかるか?彼女を忘れられないからだよ!」















そう、
他の者の中からは
アリスという存在が
どんどん薄れていって、
最後に彼らは彼女を越えた。





だが、私はどうだ。





彼女を忘れようとすれば
するほどに彼女の残像が
頭の中を埋め尽くす。

















私は、普通じゃない。





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