歪みの国のアリス《長編》


[05]Black Sun《黒い太陽》D







ちょっと手を伸ばせば



届くくらい



そんな距離まで

近づいた。












夢にまで見た瞬間、




それなのに。










触れられない。





触れてはいけない。







この想いを封じたから。







だから、


彼女には、






触れない。






もどかしい欲望を

抑えなくてはいけない。





辛かった・・・。





だが、
自分なら大丈夫だと、


我慢しようと決めた。






そう決めたのに。







つい、欲望に身体が



従いそうになり、






紙切れのような理性では



抑えようも

なさそうな状況に
陥った瞬間、




アリスを睡魔が

襲ったのだった。









「ビル・・・」



いつの間にか傍らには

猫が立っていた。



「何ですか。仕事はしたでしょう」



なぜか、つい、





きつい口調に
なってしまうのだ。

この猫には。



「後悔、してるかい・・・?」



その言葉に私は

眉をひそめた。



「後悔、ですか・・・」


やれやれといったように

肩をすくめ、


溜め息をつく。


「・・・してないですとも。私は、番人なのですから」



口では
そう言っておきながらも、


実際は、

虚しくて




仕方がなかった。






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