歪みの国のアリス《短編》


[02]Destiny *導く者Version*【完】


ぼくらのアリス・・・






なぜ、ぼくを・・・?

















Destiny〜運命〜


















皆がアリスの意志を離れて
生活し始めた頃、
僕とビルだけは違ったようだ。






導く者と番人。



ぼくは彼の次に







アリスから遠い存在。





きっと

あのトカゲと似ているのは
そのせいだろう。









いくら



耳を澄ましても、









彼女の声が聞こえることは















ない。











アリス、なぜ?





何故

ぼくをつくったんだい・・・?



ぼくはこれほどまでに
無力なのに・・・




シロウサギのように
君の傍にいることも、

頭を撫でてやることも、



出来ない。







なにもしてやれない・・・



君の意志から
離れることさえ出来ないんだ。












なのに。









「はぁ・・・」








いくら君を忘れようとしても、
ダメだった。



他の連中が

いくら君を忘れようと

ぼくの中は






いつも君でいっぱい。










胸が、


苦しい。



なんでだろうか・・・



猫は病気にならないはずなのに・・・












アリスを感じたくて、







深く、







息を吸った。




あ・・・




ぼくはくんくんと
空気を嗅いだ。




この匂い・・・




そうか、
君はまた


開けてしまったんだね・・・










導く者は、

不思議の国で・・・



いつもアリスのそばに。





シロウサギ、
一体どうしたんだ・・・
何処へ・・・


もしかして、

彼はついに
歪んでしまったのだろうか。



どちらにせよ、だ。



シロウサギ、

ぼくはこの命に代えても
アリスを護ろう。



だけど・・・

彼女がこの国で










ぼくを必要としなくなったら・・・









ぼくは、彼女を・・・

















ぼくは立ち上がり、
トカゲが潜んでいるであろう
場所へ向かった。




ビルは予想通りそこにいたが、
明らかに憔悴しているようだった。




それもそのはず。
トカゲは猫と違って
食べなきゃ生きていけないから。




アリスがいないと
それさえ忘れてしまう
この男が妙に気がかりだった。




自分と、
似ているから、だろうか。



アリスを
迎えに行くと伝えたぼくは




驚きに細長い眼を見開いたビルを残して
アリスの待つ校舎へ向かう。












アリス、ぼくを必要としてくれ。
















ぼくは欲深で嫉妬深い

気まぐれな猫。










君はどうして

ぼくのような存在を創り、

今のこの感情を

創ったのだろうか。




きっと一生解らない・・・。



一つだけわかっているのは、
ぼくの中はいつも君で



いっぱいだということ。







とろけるような、
甘い匂い。



透き通るような、
白い肌。



眩しいほどの、
笑顔。








君を手に入れたい。



魂が叫んでいる。








僕は動き出してしまった。



もう戻れない。


君無しでは、

生きていけない。





もし君が

現実に耐えられず、
壊れてしまったら。






その時は、


君を手に入れてもいいかい・・・?



それまでは、

どんな歪みでも
吸い取ってあげよう。

癒してあげよう。



ぼくは

導く者、だから。



いつの間にか
廊下を歩いていた。



目の前に現れた教室の戸に
手を掛け、ゆっくりと開けた。









眼の前に




すやすやと眠る女の子が






いた。




ドクン・・・



甘い匂いが、
その可愛らしい女の子から
溢れ出して。

教室の中は彼女でいっぱいに・・・





耐えなくては・・・いけない。

この気持ちに。



机の上に乗り、
お決まりのポーズで座る。






僕は導く者。




アリスから

二番目に遠く、



いつも
彼女のそばに、いる者。







少女が目を覚ました。






「おはよう、アリス」





〜fin〜

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