歪みの国のアリス《短編》


[01]Destiny *番人Version*【完】


その時、







私は







自分の運命を







呪った。











Destiny〜運命〜












皆がアリスの意思を離れて
生活し始めた頃、
私と猫はそれが出来なかった。



番人と導く者。




それは
アリスから最も遠い者の呼び名。




だからだろうか。



あのフードを被ったにんまり顔と
考え方が似ているのは。










アリスの
声が聞こえるまで・・・。


アリスが
私たちを必要とするまで・・・。


永遠かと思うような
永く暗い時間、
私は堪えていた。






アリスの声が聞こえないことは
彼女にとって、良い事である
というのはわかっている。






















だが、




身体が・・・




眼が・・・




手が・・・





彼女を求め、






さまよう。





この青白い手が






ほんのりと

ピンクに染まった

彼女の頬を・・・







細長い眼が



彼女のあどけない笑顔を・・・










ふと
誰かの気配を感じて顔を上げた。

灰色のフードを着た人物が
目の前に立っていた。


フードのなかに
にんまりと笑った顔が見えた。





「猫か・・・」





そのままぼーっとしていると、
彼はにんまり顔を歪ませた。




「アリスが扉を開けた・・・」



「!!」



声が、



出なかった。



喜びとも哀しみとも
言える気持ちで猫をみていると、
猫はにんまり顔に戻った。






「ぼくは・・・行くよ」



そう聞こえた次の瞬間、
フードは消え、


また




独りになった。

















「アリス・・・」








出来ることなら、



と思った。



そう、
彼女に思い出させたくない。




真実は

いつも残酷だから。






でも

私は番人。




アリスから最も遠く、
そして・・・




1番、
彼女を想っている。








番人の仕事を、しなくては。





私は立ち上がり、
耳を澄ませた。



本当に微かにだが、



アリスの声が
聞こえる気がした。





この思いは、




封印しよう。




彼女の幸福を
邪魔してはいけない。





きっと彼女は昔より
ずっと魅力的になっているだろう。





私は苦い息を吐いた。













私は番人。










アリスから1番遠く、










そして










彼女の幸福を










願う者・・・。










〜fin〜

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