暴走堕天使エンジェルキャリアー


[34]長門と春日のわくわく発見マイタウン 後編


「空いているグラスお下げしますね〜」
元気のいいウェイターが片膝を着き、手際よくグラスをトレイに乗せる。長門は軽く会釈すると、視線をカウンターの小笠原に戻した。
「誰が来るんだろうな。山本司令か?」
春日が言う。
「―ひょっとしたら一尉かも…ほら、こないだの飲み会で三佐が一尉の家で寝てたろ?あの時に…」
「なんかあったのか!?」
春日が好奇に満ちた眼で小笠原を伺う。すると、小笠原は鞄から携帯を取り出し、何やらいじりだした。
「メール?」
「みたいだね。」
小笠原は何度かキーを打つと、携帯をそっと鞄に戻す。そして、席を立ち店を後にした。
「あれ?帰っちゃうの?」
長門は春日に目を遣る。春日の瞳に轟々とたぎる好奇心を見た長門は黙って頷き、会計を済ませ足速に小笠原の後を追った。


繁華街を小笠原が歩く。そしてその後ろを、長門と春日が足音を忍ばせて着いて行く。
小笠原はアーチを潜り、数個目の交差点を曲がる。
「あっちって…ホテル街だよな?」
「そうなの?詳しいね。」
「まぁ…な。」
春日は苦笑する。
「それより!見失うぞ!」
そう言って春日は長門を急かす。だが、角を曲がった先に小笠原の姿は無かった。
「あれっ!?」
春日が素っ頓狂な声をあげる。その後ろでは、長門が辺りをきょろきょろと見回している。
「もうどっかに入ったのかな?」
「くぅ〜!相手が気になる!」
春日は本気で悔しそうに拳を握る。その様子を、長門は苦笑しながら見つめていた。
「しょうがないよ。ちょっと惜しいけど。」
長門が春日の肩を叩く。
「戻って呑みなおす!行くぞはじめ!」
そうして二人は踵を返し、飲食店街へと戻って行った。


翌日。
長門と春日は揃って司令部に登庁した。
「頭痛ぇ…」
春日は苦い表情で頭を抱えている。その横で長門は平然と、「呑み過ぎだ」と春日を諭していた。

暫く歩くと、九十九とかちあった。
「あ、煤原一尉。お早うございます。」
「おはよ。なんだ晴記、二日酔いか?」
「えぇ、少し…」
九十九は春日の肩をぽん、と叩き、小さく口を開く。
「小笠原三佐が呼んでたぞ。一も一緒にな。」
二人は背筋を伸ばし、「はい」と返事をする。すれ違うと、九十九が何かを思い出したように、振り返らずに二人に声を掛けた。
「あ、そうそう。昨日行った店。笑笑だっけか?今度俺も連れてってくれよ。」
そう言うと、九十九はまた歩きだす。残された長門と春日は顔を見合わせ、不安気な表情を浮かべる。
「なぁ、呑みに行くこと一尉に言ったか?」
「いや、言ってない…」
二人は言葉を失い、背中になにかおぞましいものが這っていくのを感じた。そして小笠原に一週間の時間外トイレ掃除を言いつけられるのだった。

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