暴走堕天使エンジェルキャリアー


[32]天使、覚醒


ドゴン。

鈍い音を聞き彩夏が目を開くと、目の前にはエンジェルキャリアー1号機の姿があった。横に目をやると、瓦礫に埋もれたBEASTの姿がある。
「遊びすぎだ、あや。」
九十九が彩夏に言った。
「ちょっと油断しただけよ。」
「立てるか?」
「大丈夫。」
ラファエルがゆっくりと立ち上がる。それと同時に、BEASTもまた立ち上がり姿勢を直す。

「下がってろ!」
九十九はそう言うと、単身BEASTに突進する。
エンジェルキャリアー1号機が右拳を突き出す。するとBEASTは左腕でガードする。
そして刃に変化させた右腕を振り上げ、一気に振り下ろす。するとエンジェルキャリアー1号機は左腕で、BEASTの右腕肘部分を掴む。BEASTの肘は、刃に変化してはいなかった。
「肘は切れないんだな。」
BEASTの顔面に、エンジェルキャリアー1号機の右拳が極まる。BEASTは短い悲鳴をあげ、大きく後ろにのけ反る。
「ボディががら空きなんだよっ!」
エンジェルキャリアー1号機は右手を白く輝かせ、BEASTの腹をめがけ手刀を繰り出す。

その時、掴んでいたBEASTの右腕肘が刃と化した。
「ああっ!」
九十九の左手に激痛が走り、切断されたエンジェルキャリアー1号機の指が地面に落ちる。
「一尉!」
小笠原が叫ぶ。インカムからは九十九の悲鳴が聞こえていた。
「こんのぉぉ!」
ラファエルが左腕を構えながら、BEASTに突進する。しかし、BEASTは両目を光らせ、衝撃波を放ちラファエルを一蹴する。
その間にも、エンジェルキャリアー1号機はうなだれ、九十九は左手を押さえながら悲鳴をあげていた。
そして、BEASTがゆっくりと、両腕を振りかぶる。
「つーくん、逃げて!」
彩夏の叫びも虚しく、九十九はただ悲鳴をあげていた。そして、BEASTが両腕を振り下ろす。

ドクン。

エンジェルキャリアー1号機のコクピットに鼓動が響く。そして九十九にとって、とても懐かしい声が聞こえた。
「シスター…?」
刹那、モニターが真っ赤に染まり、英文が画面を埋め尽くす。

「"Gabriel" operation system standup」

最後の一文が画面に表示されると、九十九の左手の痛みが消えた。
そして、エンジェルキャリアー1号機―ガブリエルは両目を赤く光らせ、咆哮をあげながらBEASTの両腕を掴む。
ガブリエルはゆっくりと立ち上がり、両手を白く輝かせ、BEASTの両腕を引き裂いた。その様子を見た彩夏は、眉をひそめ呟く。
「なによ、あれ…どうしちゃったのよ?」
BEASTは悲鳴をあげながらも、両目を光らせ衝撃波を放ち、衝撃波はガブリエルを直撃する。が、ガブリエルは微動だにせず、衝撃波を受け流す。

「…」
小笠原以外管制室の面々はモニターに釘付けになる。
BEASTは衝撃波を連射するも、ガブリエルはその全てを受け流す。そして恐怖に慄くかのように後ずさるBEASTに詰め寄り、両腕を白く輝かせる。
そして、咆哮をあげながら、BEASTの胸を貫く。
BEASTは悲鳴をあげながら、光の柱となり虚空へ消える。そして空には、白い羽根が舞った。

「あれがエンジェルキャリアーの…ガブリエルの力…」
小笠原はモニターを見つめ、小さく呟いた。


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