暴走堕天使エンジェルキャリアー


[30]Angel's Stabber 前編


その日は朝から激しい雨が降っていた。


「キャリアー両機、迎撃ポイントに到着しました。目標、迎撃可能範囲到達まで3分です。」
春日がインカム越しに伝える。それを聞いた小笠原は黙って頷き、九十九と彩夏に話し掛ける。
「煤原一尉、水無月二尉、準備はいいな?」
「OK。」
「バッチリよ。」
九十九は光学ズームのモニターじっと見つめ、彩夏はニヤリと笑う。二人が見つめる先には、四肢を持ち、二足歩行するBEASTの姿があった。
「目標、射程内に入りました!」
「作戦開始!」
小笠原の激に合わせ、ウェポンビルからミサイルが発射される。BEASTは直撃の衝撃にのけ反りながらも、エンジェルキャリアーの元へ進攻する。
「弾幕が止むぞ、あや!」
「任せといて!たあぁっ!」
ラファエルは地面を蹴り、BEASTを目掛け走り出す。そして空高く跳び、そのままBEASTに蹴りを入れる。
たが、BEASTはその攻撃を両腕でガードする。
「ちっ!やるじゃない!」
ラファエルは空中で後転し、間合いを取り着地する。すると横から、エンジェルキャリアー1号機が走って来る。
「あや、どいて!」
エンジェルキャリアー1号機の白く光る右手が、BEASTの脇を目掛け突き出される。だがBEASTはそれをかわし、左腕を振り払う。
「つっ!」
紙一重で攻撃をかわしたエンジェルキャリアー1号機の左腕には、僅かに切り傷が刻まれていた。見ると、BEASTの左腕は日本刀の様な形に変化していた。

「つーくん、大丈夫!?」
「大丈夫、かすっただけ。けどあの動き…格闘戦だと歩が悪いな。」
「でもやるっきゃないでしょ。MB砲を準備してる暇なんか無いんだし。」
「そうだな。―行くぞ、あや!」
「オッケー!」
二機のエンジェルキャリアーがBEASTに突っ込む。二機のエンジェルキャリアーは拳と脚で、BEASTは両腕で、まるでアクション映画のような一進一退の攻防を繰り広げる。

しかし二対一で互角、更にパイロットには生体インターフェイスによる生身へのダメージと疲労で、次第に戦闘はBEASTに有利な展開となっていく。
その様子をモニターしていた小笠原が、インカム越しに二人に言う。
「援護する!一度離れろ!」
その声に二機のエンジェルキャリアーはバックステップを踏み、BEASTと間合いを取る。
「ミサイル一斉射!」
ウェポンビルからミサイルが一斉に放たれる。だがBEASTは両腕を刃物の形に変え、全てのミサイルの弾頭を切り落とし、弾頭はBEASTの足元で爆発する。
「集束レーザー砲、発射!」
今度はウェポンビルからレーザービームが放たれる。BEASTは両腕を胸で交差させると、着弾の瞬間に両腕を振り払い、レーザーを虚空へと跳ね返した。
その様子を見た九十九、彩夏、小笠原は、ただ目を丸くしていた。そして、小笠原は爪を噛みながら小さく呟く。
「常識を逸している…」


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