暴走堕天使エンジェルキャリアー


[23]晴れやかな憂鬱


九十九が目を覚ますと、そこには小笠原の姿があった。九十九には今、自分がどんな状況にあるのか解らなかった。
「小笠原…二尉?」
突然の言葉に小笠原は驚く。
「煤原君!気付いたか!」
小笠原らしからぬ大きな声が寝起きの九十九の頭に響き、九十九は少し表情を歪めた。それに気付いた小笠原は、「しまった」という表情を浮かべる。
「あ…済まない、一尉。」
九十九は重たい身体を無理矢理に起こし、辺りを見回す。
「…病院?」
徐々に意識がはっきりしてくる。だが、何故自分がここに居るのかは、どれだけ考えても解らなかった。
小笠原は頭を抱える九十九を制し、声を掛ける。
「無理をするな。今ドクターを呼んでくる。」
一人になった病室で、九十九は呆けているしかなかった。

「一尉!無事ですか!?」
長門が大声をあげながら、病室に駆け込んで来た。その声はやはり九十九の頭に響き、九十九は苦悶の表情を浮かべる。
「あ…すみません。つい…」
長門は申し訳無さそうに頭を掻く。そんな長門の頭を、彩夏が景気良くバシンと叩く。
「病院では静かにしなさい!」
そんな彩夏の姿を見て、九十九は驚きの表情を浮かべる。
「あや!?何で!?」
驚く九十九を余所に、彩夏はにっこりと笑って言った。
「久しぶり。」
九十九は全く状況が理解出来ないでいた。

「じゃあ、何も覚えてないんですか?」
「あぁ。マイクロブラックホール砲ぶっ放して敵に包まれて…気付いたらココ。」
長門と彩夏は顔を見合わせる。すると今度は九十九が尋ねる。
そして長門が、九十九が失踪してからの事、彩夏の事を説明する。九十九は相槌も打たず、黙って聞いていた。
そして長門が話し終わると、自分に言い聞かせるように話を要約する。
「で、俺は死んだ事になって、二階級特進して一尉になって、補充であやが異動して来た、と。」
「そう言う事です。」
「そうか。水無月の家は軍属だからな。」
「そゆこと。」
九十九はようやく合点が入ったらしく、一人でうんうんと頷いていた。その様子を見て、長門は薄く笑う。
「なに笑ってんのよ、准尉。」
「いえ…いつも通りの一尉なんで。安心したっていうか。」
「なに、一も昇進したの?」
「ええ、まぁ…」
俺が寝てる間に、と九十九が茶化すと、三人はからからと笑った。だが、急に九十九の表情が険しくなる。
何事かと思い、長門が尋ねると、九十九は声を低くして言った。
「俺が生きてるって事はさ…特進の件はどうなるんだ?」
「…そういえば…確かに…」
病室に沈黙が訪れ、三人は空気が凍り付くのを感じた。


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