暴走堕天使エンジェルキャリアー


[20]天使、降臨


「よくも好き勝手やってくれたわね…!」
ラファエルは白く輝く右腕で首に巻き付いた弦を引きちぎり、BEASTの腹に蹴りを入れる。BEASTはそのまま波をうつように、地面に引っ込んでいく。
「また隠れた…けどねっ!」
ラファエルの背後から、黒い弦が、ラファエルに向かい何本も伸びる。
「見えてんのよっ!」
ラファエルは上半身を大きく捻り、右腕ですべての弦を断ち切る。
更にその背後から、弦が束になりラファエルに襲い掛かる。
ラファエルは上体を反らしそれをかわし、右腕で弦を掴む。
「あたしを怒らせたわね…後悔しなさい!」
ラファエルが弦を引き込むと、BEASTは初めて地を離れ、上空へ投げ出された。
そしてラファエルは右腕を構え、BEASTの腹を目掛け真っ直ぐに突き出す。
「シャイニングフィンガー!!」
手刀が極まるその刹那、BEASTは何本もの弦に分裂し、手刀をかわす。そしてそのまま、ラファエルに被い被さる。
「なっ!?」
ラファエルはBEASTにすっぽりと包まれ、倒れ込んだ。
「きゃ…」
管制室に悲鳴が響いたかと思うと、モニターからは何も聞こえなくなった。
「二尉っ!」
小笠原が叫ぶ。が、沈黙が耳を刺す。

BEASTはラファエルに被さったまま、もぞもぞと波打っている。時折大きな瘤が飛び出たかと思うと、まるで噛み付くようにラファエルの身体を打ち付ける。
そして、管制室のモニターが真っ赤に染まる。
「ラファエルの各部外装に亀裂…パイロット心拍微弱!」
「っ!二尉っ!え…援護だ!ミサイル掃射!」
小笠原はうろたえていた。長門は肩を落とし、ただじっとモニターを見つめていた。
「ラファエル、右腕…断裂…各部外装、レベル3まで損傷…」
「まさか…」
管制室の者全員が、ラファエルの―エンジェルキャリアーの敗北と、彩夏の死を想定した。

そこに、上空から一筋の光が降り注ぎ、ラファエルに取り付いたBEASTに直撃し、その身をバラバラに切り裂いた。
「な…」
小笠原以下、管制室の者全てが、モニターを見つめていた。小笠原達が見つめる先には、しなやかな三次曲線に白い肌を纏った巨人が―エンジェルキャリアーの姿があった。
「敵性反応消失…水無月二尉の生存を確認!」
春日が管制室全体に響き渡るような大声で報告する。
「直ぐにラファエルを回収!医療班、準備しろ!それと…」
小笠原はそこで一度、口をつぐむ。
「それと、キャリアーの回収も…だ。」


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