暴走堕天使エンジェルキャリアー


[18]長門一の憂鬱 中編


「状況は?」
「丹沢山に敵性反応。現在は自衛軍の迎撃を受けながら都内に向かい侵攻中。約1時間後に都内に侵入します。」
小笠原は携帯電話を肩に挟み、後ろ髪を纏めていた。
「丹沢山?あそこには観測所があるだろう。通報は無かったのか?」
「それが、突然現れたそうで…」
春日がやや申し訳なさそうに口ごもる。
「解った。すぐ管制室へ向かう。それまで頼む、士長。」

そして、1時間後。
BEASTは自衛軍の攻撃を跳ね退け、都内に侵入した。

「目標確認。モニターに出します。」
モニターに映されたその姿は、これまでにも増して不気味な姿だった。地面から続いている瘤のようなものが、まるで山が動いているように、ズルズルと地を這ってくる。
それを見た小笠原は、背筋に毛虫が這うような感覚を覚え、小さくつぶやく。
「常識を逸している…」
そして小笠原が攻撃命令を出し、迎撃戦が開始される。

「二尉、15秒後に弾幕が止む。それからは頼んだ。」
「了解。なぁに、こないだだって楽勝だったんだから。」
彩夏はそう言ってニヤリと笑う。そして、弾幕が止む。
「水無月彩夏、行きま―っ!」
ラファエルが景気良く跳び出そうとしたその時、爆煙に包まれていたはずのBEASTの姿が、ラファエルの目の前に迫ってきていた。
そして瘤から植物の弦のような物が伸び、ラファエルの両腕に絡みつく。
「なっ…何よ、こんなの!」
ラファエルは腰を捻り、BEASTの脇を目掛けて蹴りを放つ。
するとBEASTはすっと地面に引っ込み、それをかわす。
「なっ!?」
そして今度はラファエルの直ぐ後ろに現れ、ラファエルの両腕を後ろ手に絡める。
「きゃあっ!」
ラファエルの両腕からミシミシときしむ音が聞こえる。
「援護っ!」
小笠原の声に合わせミサイルが発射される。ミサイルはBEASTの背部に命中し、ラファエルの両腕を絡めていた弦が外れる。
そしてBEASTはまた地面に引っ込んだ。

「敵は?」
彩夏は態勢を立て直し、辺りをきょろきょろと見回す。
「敵性反応!ラファエルの直下!」
コクピットに春日の声が響く。
「見付けた!」
ラファエルは左腕を大きく振りかぶる。
「シャイニングフィンガー!」
神々しく輝く左手を真っ直ぐ、直下のBEAST目掛け振り下ろす。

ガキン。

大きな音を立て、ラファエルの動きは途中で止まった。
「えっ!?」
そして、足元から真っ黒い弦が何本も伸び、ラファエルの全身を絡め取る。
「まさか…」
その様子をモニターしていた長門が声を漏らす。
弦は幾重にもラファエルに巻き付き、その身体を締め付ける。
「きゃああぁ!」
「二尉っ!」
管制室に彩夏の悲鳴が響いた。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.