暴走堕天使エンジェルキャリアー


[14]重力の井戸 前編


「キャリアー2号機、所定迎撃位置に到着。非常警戒体制整いました。」
春日がそう報告した。するとキャリアー2号機の彩夏から通信が入る。
「そんなダサい呼び方しないでよね、士長。ラファエルと呼んで。」
「は…失礼しました。ラファエル、迎撃準備完了。」
その言葉を聞いて彩夏はニヤリと笑う。そしてキャリアー2号機―ラファエルのモニターにBEASTの姿が映る。
その姿はこれまでのBEASTとは違い、不気味な程に無機質な球体に見えた。
「これが―BEAST…」
彩夏は初めて対峙するBEASTの姿に、暫し言葉をつぐむ。そこに、管制室の小笠原から通信が入る。
「二尉にとっては初めての実戦だ。気を引き締めて掛かれ。」
「わかってます。なぁに、シミュレーションでも無敗だったんだから。」
彩夏は再びニヤリと笑う。

「目標、射程距離に入りました!」
「迎撃開始!」
小笠原の激に合わせ、ウェポンビルからミサイルが一斉に発射される。ミサイルはBEASTに直撃し、BEASTは爆煙に包まれる。
「ラファエル、行きます!」
ラファエルがBEASTに向かいダッシュする。左手を白く輝かせ、まっすぐにBEASTに向けて突き出す。
「シャイニングフィンガー!」
ラファエルの左手は爆煙を切り裂き、BEASTの中央を居抜く。

だが次の瞬間、目の前に居たはずのBEASTの姿が忽然と消えた。
「なにっ!?」
彩夏は虚空を見つめ叫ぶ。刹那、ラファエルのモニターが真っ赤に光り、激しい警報が鳴り響く。
「足元!?どうして…くっ!」
ラファエルの足元が妖しくうねり、そこから白い光の柱が立ち上る。光の柱は空を焼き、雲を飲み込みながら上空へと消えた。
ラファエルは間一髪それをかわし、彩夏は上空を見つめていた。
「なによ、コレ…」
するとまたしてもモニターが赤く光り、コクピットに警報が鳴り響く。
するとラファエルの上空の空間が歪み、虚空から黒い光がラファエルに向かいまっすぐに降り懸かる。
「上っ!きゃあっ!」
黒い光はラファエルを包み、その機体を地面へと圧し付ける。
「二尉!援護は出来ないのか!?」
小笠原の怒声が響き、春日がそれに応える。
「敵本体が見つかりません!」
すると黒い光が丸みを帯び、そこに先程の球体のBEASTが現れた。ラファエルは更に地面に圧し付けられていく。
「敵本体確認!」
「ミサイル掃射!二尉を援護しろ!」
ウェポンビルから再びミサイルが放たれ、爆煙がBEASTを包む。だがBEASTは怯む事無くラファエルを圧し続ける。そしてラファエルの足元は崩れ、地下鉄の幹線へと崩落した。


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