第43章


[08]


「ひゃー、親父たちの話していた通り、スッゲーな! なーなー、もちょっと近くに見に行こーよ」
 目を輝かせ、興奮冷めやらぬ様子で子ニューラは無邪気にはしゃぐ。
「ばっか、オメー、町には人間どもが沢山いるんだよ。ぞろぞろ俺様達が降りて行ったら大騒ぎだ。
こっからの景色だけでも充分だろうが」
 また無茶を言い出そうとするクソガキに、あっしは言って聞かせる。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。人間なんてオレ達よりノロマだし、こっそり進めばバレないって。
それに、あのでっかい塔の近くまで行けば、人間は全然いないってさ。親父達が言ってたんだけど、
あの塔の周りはシンセーだとか何とかで、フツーの人間は近寄らせてさえもらえないんだってよ。
っつーわけで、お先にっ! ひゃは、おまえも来い、チビネズミ!」
 子ニューラは再びマフラー野郎の背中からチビ助を素早く引っ張り出し、強引に連れて駆けて行った。
「あ……」
 呆気に取られた様子でマフラー野郎は声を漏らす。
「あ、じゃねえよ馬鹿野郎。おめえなあ、大事なガキなんだったら、もうちょっとしっかりと
背中に縛りつけておきやがれよな」
「いやあ、あんまり強く縛り付けると、あいつ嫌がってむずかるからさあ。仕方ない、後を追おうか」
「こんな調子であのガキに振り回され続けるのはごめんだよ……」
 うんざりとニャルマーは呟く。
「まあまあ。ちゃんと約束はしたんだから大丈夫さ。強がってはいるけどあの子まだまだ小さいし、
本当の親が恋しくなって里に帰りたくなる時が必ず来るだろうしね」

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