第43章


[05]


「さて、ニューラの方も自分で歩く気になってくれたみたいだし、俺達も行こうか」
 けろりとしてマフラー野郎はあっしとニャルマーに振り返る。
「狙って焚き付けたのかい?」
 ふう、と呆れたように溜め息をついてニャルマーは尋ねた。
「何のことだい?」
 にこにことマフラー野郎は微笑んで聞き返す。
「やれやれ……アンタ、あたしの同業者として充分やっていけそうだねぇ」
「やだなあ、人聞きの悪い。俺のはあくまで躾の一環さ」
 ……何だかもう、あっしにはこいつら二匹が同じ穴の狢にしか見えなくなってきていた。
「おーおー、おっかねえ。だが、あんな調子で振り回させて、大丈夫なのか?」
「なーに、平気さ。男の子は少しくらいの怪我なら気にせず元気に遊んでくれた方がいいよ。
あいつ、あんな目つきの上に無愛想だから、他の子も臆しちゃって全然友達が出来なくってね。
あの子ニューラみたいに気にせずがつがつ引っ張って行ってくれる子は貴重だよ」
 マフラー野郎は微笑ましそうに、どこか懐かしむように、先行く子ニューラとチビ助を見やった。
 果たしてあんなまるでぬいぐるみみたいにぶん回されるのが、友達と遊んでいるなんて穏やかな表現をして
いいものか分からないが、親が認めている以上あっしが口を挟むことじゃないんだろう。
 そんなこんなありながら歩み続けている内、周りの木々の葉にチラホラと赤茶に染まったものが
散見し始めてきていた。紅葉の前線、エンジュシティはきっともうすぐ近くだ。

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