第43章


[03]


「おお? ひゃは、なんだこいつ、ネズミよりちっちゃいネズミ! なーなー、おまえもビリビリ出せるの?」
 興味津々な様子で子ニューラは目を輝かせ、足の疲れもすっかり忘れたように詰め寄っていく。
 チビ助は少しびくつきながらも子ニューラをじとりと無言で暫し見据え、ふんと鼻を鳴らしてぷいと顔を背けた。
「あ! 無視すんなよ! オレはニューラ様だぞ、おまえなんかよりずっと強いんだぞー!」
 むっとした様子で子ニューラはチビ助が顔を背けた方へと回り込んだ。ぎょっとしながらもチビ助は再び
鼻を鳴らしてそっぽを向き、子ニューラもむっとして先回りし、負けじとチビ助も背を向け――二匹はそんな応酬を
しばらくの間繰り広げた。
「むー、おまえ、ナマイキだ!」
 とうとう業を煮やしきった子ニューラはチビ助の首根っこを掴む。
「おや?」
 背の違和感にマフラー野郎が振り返るより早く、子ニューラはマフラーからチビ助を引きずり出す。
チビ助は面食らった様子で慌ててじたじたと逃げようとするが、子ニューラは背後から覆い被さるようにチビ助の
体を押さえつけてしまう。
「にひひ! おら、悔しかったらビリビリ出せッ!」
 言って、子ニューラはそのままチビ助の幅広の左耳にがぶりと噛みついた。
「ぴゃー――ッ!?」
 いつもは子どもらしからぬ横柄とも思える程の落ち着きを持ったチビ助が、初めて悲鳴を上げた瞬間だった。


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