第43章


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 どうせ止めても無駄だろうとは諦めつつも、一抹の期待をかけてあっしはマフラー野郎を止めようとする。
「ま、待て!」
 だが、あっしが口を開く前に、少し躊躇が混じる制止の声が響き渡った。直後、声の方から石ころが
飛んできて、今にも癖毛のガキの襟元を掴もうとしていた団員の腕に命中した。団員は思わず怯み、
癖毛のガキから腕を退いて少し後ずさる。その間隙に、一つの影が素早く踊り込み、癖毛のガキを庇うように
団員達の前に立ち塞がった。
 突然の事にマフラー野郎も飛び出すのを思いとどまり、静かに様子を見始める。
 影の正体は、癖毛のガキよりも幾らか背の高い、七、八歳くらいのこれまた人間のガキだ。
今後の成長を見越して買い与えられたであろう少し大きめのぶかぶか帽子が特徴的だった。
「大丈夫?」
 ぶかぶか帽子のガキが背中越しに声をかけると、癖毛のガキは少し驚きながら「うん」と頷いた。
 兄貴か友達が助けに来たのかとでも思ったが、癖毛のガキのきょとんとした様子からして違うようだ。
「君、確か一緒の観光ツアーの子だよな。同じバスにお母さんらしき人と一緒に乗ってたのを覚えてる。
みんなから離れて一人でふらふら林に入っていくのを見かけてさ。気になってついてきてみて良かった」

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