第43章


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「ん!? なんだこのガキ!?」
「――え!? ……あれ、ここどこだ? オジサン達、誰?」
 計りかねている内に、とうとう両者は鉢合わせになったのか、ガキと、団員の一人の声が上がる。
目を向けると癖毛のガキはまるで今しがた眠りから目覚めたように状況が飲み込めない様子で呆然として、
立ちはだかる人相の悪い二人組みを見上げてうろたえている。
団員どもは立ち竦んでいる癖毛のガキを睨み下ろしながらひそひそと話し合いだした。
「しまったな。どうするよ?」
「小さなガキとはいえ、目撃者だ。放っておくわけにはいかないだろう」
 団員どもは顔を見合わせて頷き、恐怖に動けずにいる癖毛のガキを引っ捕まえようと腕を伸ばす。
あのガキに団員達の注意が集中している今、あっしらが逃げ出すには絶好の機会だ。
だが、そそくさととんずらしようとしているあっしとニャルマーを余所に、マフラー野郎の奴は今にも
飛び出していきそうな身構えで団員どもを見据えている。
 ……おいおい、正気かよ。ガキなら人間であろうとお構いなしってか。前々から執念めいたものを
感じてはいたが、こりゃマジもんだ。
 何があいつをそこまで駆り立てるのか。ガキの危機に直面した時にあいつが見せる表情は、
単なる子ども好きやお人好しでは片付けられない鬼気迫るものがある。激しい怒りと焦りの中に、
どこか深い憂いや後悔のようなものが垣間見える複雑なものだった。

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