第43章


[12]


「チビ助、何をどう勘違いしたのか知らないけど、あれは鳥じゃあない。虹って言うんだよ。
いつだったか前にも見た時に教えなかったけ?」
 マフラー野郎が諭すように言っても、チビ助は首をぶんぶんと横に振るい、何かを訴え続ける。
ううん、と怪訝そうにマフラー野郎は唸った。
「どーせ、ピジョンかなんかを見間違えたんだろ。そんなのほっといて、早く行こーよ」
 待ちくたびれたように子ニューラが急かす。
「ごめんごめん。ほら、皆待ってるから行くよ、チビ助」
 宥めながらマフラー野郎はチビ助を有無を言わさず背負い上げる。チビ助は不服そうにぷうと頬を膨れさせた。
 気を取り直して出発しようとしていると、かさかさ、がさがさ――と、それぞれ別の方から
微かにあっしら以外の何者かが落ち葉を踏みしめるような音が響く。あっしらは顔を見合わせ、
慌てて小道から手頃な木の陰に隠れ、音の方をそっと確認してみた。
 かさかさ、と鳴った先では、どこから入り込んだのか、四、五歳くらいの前髪にクセがある
人間のガキ――あれは確か、関所横の池を渡る時、あっしらの姿に気づいていた奴だ――が一人で、
丁度さっきのチビ助と同じような様子で、塔を見上げてふらふらと歩いていた。
 がさがさとなった方を見ると、黒い服に身を包んだ二人組みの男――ありゃ、どう見てもロケット団員だ。
追っ手かと思い一瞬ヒヤリとするが、よくその姿を見ると二人とも大きな袋を背負っている。
きっとスズの塔に金目の物でも狙って忍び込もうとしてやがるんだろう。
 両者の目指す方向的に、このままだとあのガキと団員どもはばったりと出くわしてしまうことになる。
例え相手がガキだとしても、団員どもは目撃者をただでは帰しはしないだろう。さて、どうするべきか。


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