第43章


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「さて、俺達はちゃんと約束を守った。今度は君の番じゃないかな、ニューラ」
 マフラー野郎は優しく問い掛けるように子ニューラに言った。
「あ、そーだった。よーし、じゃあこのオレさまがジキジキにおまえらを里まで案内してやる。
トクベツなんだからな、感謝しろよ」
 どん、と子ニューラは偉そうに胸を張る。
「ああ、実に光栄だよ。ありがとう」
 くすっと笑い、マフラー野郎は礼を言った。
「それじゃあ、早速、案内してもらおうか。チビ助もご苦労だったな、さあ、おんぶしてあげるから、
おいで――あれ、どうした、チビ助?」
 出発しようとマフラー野郎が声をかけても、チビ助はぼんやりと魅入られたように上を見たまま
一向に動こうとしない。まだまだ紅葉を見ていたくてそうしているのかと思ったが、
チビ助の視線は木々の葉ではなく、その隙間から覗くスズの塔の上空辺りへと向けられているようだった。
「おーい、しっかりしろ、チビ助。戻ってこい」
 軽く体を揺すりながらマフラー野郎が声をかけ続けると、チビ助はハッとした表情を浮かべて、
マフラー野郎の顔を見やった。
「一体、どうしたんだ?」
 マフラー野郎が尋ねると、チビ助は少し興奮した様子で身振り手振り何かを伝えようとする。
「え? 『七色に光るでっかい鳥がいた』って?」
 マフラー野郎が訳すと、こくこくとチビ助は頷いて空を指差した。
 あっしらは一斉に差された方を見てみるが、そんな鳥の姿なんて無い。あるとすれば、
雨も降っていないのにいつの間にか空に架かっていた虹くらいだ。


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