第42章


[06] 


「その通り、俺が命じてお前をここまで連れてこさせたのさ」
 木の裏に隠れたまま得意げな調子でデルビルは答えた。いくら欺くためとはいえ、人間の、とりわけあんな奴の
ポケモンなどという設定はどうにも癪に障るが、ここはぐっと堪える。
「こんなことして、一体どういうつもりだ!」
「くっくっく、なあに、一つ二つ質問に答えて貰いてえだけだ。お前が売っているヤドンの尻尾は一体どこから
仕入れてきたもんだ? 今、ジョウトじゃあヤドンの尻尾の売買は、大っぴらには規制されているはずだよなあ」
 デルビルの問いに、男は途端に顔色を変える。叩けば幾らでも埃が出てきそうだ。
「チッ、てめえ、サツか? いや、その口ぶりからして――」
「おっと、やれ、ミミロップ」
『はいはい』
 言われるまま、ミミロップは男の腕を締め上げる力を少し強める。「ぎゃっ」と男は短い苦悶の叫びを上げた。
「質問を質問で返すんじゃあねえよ。先生に習わなかったか? 大人しく答えたほうが身のためだぜ。
そのウサギとネズミは一見かわいい顔して、凶暴なのさ」
「こ、こんなことしてただで済むと思ってんのか。俺の仲間が黙っちゃいねえぞ……!」
「それはお前に何かあったのがバレりゃの話だろう? 今ぐらいの時期は、アリアドスやヨルノズクが冬に備えて腹を空かせてる。
こんな所に手ごろな動かない肉の塊が転がってたら、あっという間に片付けてくれるだろうなあ……」
 人間の言葉でありながら人間にあらざぬもののように冷徹に響く声。男の顔が、みるみる青ざめていく
「わ、わかった、話す! ヒワダタウンの、ヤドンの井戸だ! あの井戸の奥にヤドン達を閉じ込めて、尻尾を切り集めているんだ!」


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