第42章


[05] 


 男は道の真ん中でぼうっと突っ立って次の被害者を待ち構えているようだ。
「んん?」
 足音に気づいた男が不意に振り返り、俺は男の足元すれすれの地面に目くらましの電撃を放つ。
男が一瞬怯んだ隙にミミロップは素早く間合いを詰め、咄嗟にモンスターボールを取り出してポケモンを
繰り出そうとした男の腕を掴んであっという間に背後から締め上げた。男は苦悶の声を上げ、
手からぽろりとボールを転げ落とす。ボールが開いてしまう前に、俺は素早く滑り込んでキャッチし、
スイッチをロックに切り替えた。
 ポケモンを使役するトレーナーは厄介な相手ではあるが、ポケモンを繰り出せないようにしてしまえば、
後はどうということはないただの脆弱な人間だ。特異な例としてトレーナーでありながら自身も自力で岩を砕けるほどに、
ポケモンと共に肉体を鍛え上げてているような無茶な輩もいると聞いたことはあるが、少なくともこいつはそうじゃない。
「ぐぐ――なんだ、こいつら! だ、誰か、たす――!」
 騒ぎ立てようとする男の口をミミロップは耳で覆う。
『黙ってなさい。大人しくしていれば、すぐに終わるわ。――って、言っても、通じないか』
 容赦なく締め上げながら、ミミロップは男を林の奥へと手際よく引き擦り込んでいく。
『よいぞ、デルビル』
 予定の位置にまで男を引っ張り込み、俺は木の裏に身を隠しているデルビルに声をかける。
『おうよ――』……あー、ゴホン。よくやったな、お前ら」
 デルビルは犬らしい鳴き声で俺に応答した後、少しくぐもった人間の言葉で言った。
「こ、こいつらをけしかけたのはお前か!」
 口の覆いだけ外され、男は声の方へと叫びつける。



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