第42章


[04] 


「わ、わかってたわよ、そのくらい。で、どうすんの? あいつ、見張ってみる?」
「いや、奴はまだまだあそこで押し売りを続けるつもりらしい。あんな調子では売り切れるはずもないし、
諦めて動き出すのを待っていたら、日が暮れてしまう。ここは手っ取り早く奴に聞いてみるとしよう」
「えー、でも、私達の言葉なんて人間には通じないでしょ」
「そういう時のために、おあつらえ向きの奴がいるだろう」
 言いながら、俺はデルビルを見やった。全員の視線がデルビルに集う。
「おいおい、待てよ。自分で言うのも何だが、俺みたいな人の言葉を話せる珍デルビルが、
あんな明らかに同業――同情の余地もなさそうな悪徳野郎の目の前にのこのこ出て行ったら、
とっ捕まって見世物小屋に売り払われちまうに決まってるぜ」
 うろたえながらデルビルは首を横に振るう。
「誰が直に姿を晒せといった。いいか、よく聞け――」
 俺は全員を集めて作戦の概要を話した。

「――では、取り掛かる。準備はいいな、ミミロップ」
「まっかせてー。んふふ、人型相手の体術は師匠から粗方習ってはいたけど、実際に人間で試すのは初めてね」
 どこかうずうずした様子でミミロップは両拳を組んでぱきぱきと指を鳴らした。
「やる気なのはいいが、ちゃんと加減はしろ。人間は脆い」
 呆れ混じりに俺は言う。
「わかってるってば。じゃ、よーい、ドン!」
 掛け声とともに、俺とミミロップは茂みを飛び出し、男の背に向かって勢いよく駆け寄る。


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