第42章
[29]
ぱちぱちと小さな火の粉が跳ねる暖かな竈を囲むようにして、俺達は一息をついた。
ずぶ濡れで酷い状態だったアブソルも、火の傍らで体を温めて乾かし、ミミロップの手により
丁寧に毛を繕われている内に少しずつ元のツヤのあるふわふわとした毛並みを取り戻していった。
「ごめんね、迷惑かけちゃって……」
しょんぼりとアブソルは呟く。
「いーのいーの、気にしない気にしない」
頭の毛並みを整えてやりながら、ミミロップは微笑んで首を横に振るう。
「でも、いつもボクばかりみんなの足を引っ張っている気がして――」
「ほーら、そんなしょげた顔して、油断してると、こうだっ!」
言葉を押し止めるように、ミミロップは唐突にアブソルの体をくすぐり出す。
「ちょ、やっ、くすぐっ――きゃははは!」
「んー……あ、ずるい! あそぶならマージも!」
うつらうつらとしながら漂っていたムウマージも二匹の様子にぱちりと目を覚まし、意気揚々と加わりにいった。
「ふふふ、いいわ、マージちゃんもかかってきなさいっ」
気を緩めすぎるなと忠告したばかりだというのに、いつもいつも騒々しい奴らだ。
心の中で毒づきながらも、己の口の両端が薄っすらと上がっていることに気付く。
らしくもない、と頬を軽く叩く振りをして俺は無理矢理口端を引きおろした。
最近になって妙に己の頬めが勝手に緩む事が多くなったように感じるが、笑顔など俺には馴染まぬ。
「うるっせーな……これだからガキは……」
三匹がじゃれて転げ合う隅で、小うるさそうに顔をしかめてデルビルは後ろ足で頭をばりばりと掻く。
あれだけ己の姿を嫌がっていたというのに、こいつの方は何だか随分と犬らしい仕草が板についてきたものだ。
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