第42章


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 そうこうしている内に日は傾き、空が藍色に染まりかかろうとしていた頃、外からこちらへと向かってくる気配を感じ、
俺達は慌てて身支度を整えて窓から小屋を飛び出した。直後、小屋の扉が開かれ、そっと様子を窺うと、
厳つい中年と、メガネをかけたまだ若い男の二人組み、そして二羽のカモネギ――常に植物の茎を一本
まるで刀のように携えている、茶色い羽毛をした変わり者の鳥ポケモンだ――が、少し消沈した様子で帰ってくる。
「やっぱりヤドン、どこにもいませんでしたね」
 若い男が、厳つい男にがっかりとして話しかける。
「うーん、森の神様がお怒りなのか……? 何にせよ、よくねえ知らせかもな。こんな時はじっとしているに限る。
しばらく森に薪を取りに行くのはやめだ」
 どすんと板間に腰を下ろし、厳つい男は深々と溜め息をついた。
『ぼーっとしてて何考えているかわからない奴らだったけれど、いざいなくなると寂しいものだな、兄弟』
『ああ、決して悪い奴らではなかった……』
 心配そうにカモネギ達も言葉を交わす。
 どうやら町の一般人達には、ロケット団の存在と所業はまだ公になってはいないようだ。とりあえず町ぐるみで
ロケット団を匿っている風では無さそうで、一先ず安堵する。極小さな規模とは言え、流石に町一つ丸々相手取るのは厳しい。
 こんなニャースの額のような小さな町においてもあの黒い社会の病巣めらは、地下や夕闇の狭間に巧みに潜伏し、
腐り果てた根を気付かれぬようひっそりと張り巡らせることができるというのか。何ともおぞましい、唾棄すべき生命力だ。
これは、早々に根元から削ぎ取って根絶してやらねばなるまい。人間のためなどではない。あくまでポケモンの平穏が為。
”そして、志半ばに倒れた彼らの無念を晴らすが為”――いつ、どこぞから降って湧いたかも分からぬが、
何故だかそんな強い思いが俺の心に滾りつつあった。炭が孕む火のようにじわりじわりと。
かつて己を焼いた炎を少しずつ思い起こすかのように。


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