第42章


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 偶に行き交う人間を避けながら行く途中、一際明かりの強い一角を見つけ、
例のごとくジャリコンビが止める間もなく吸い寄せられるように覗き込みに向かう。
嘆息を噛み殺して後を追い、背後から様子を窺ってみる。
 その先では、赤と黄色のド派手な格好をした太った男と、赤茶色の体毛をした
六本の尻尾を持つ狐のようなポケモン、ロコンが互いに競うように火を吹きあっていた。
大道芸人という奴か? なんだってこんな辺鄙な洞窟の一角でパフォーマンスをしているのかは
理解に苦しむが、洞窟を照らす奇妙な明かりの正体は、奴らによるものだったようだ。
納得して、「まだ見ていたい」とぶーたれるアブソルとムウマージを引き摺るようにして
その場を後にした。
 その後の道中にも、先程の火吹き男と同じ格好をした同業者らしき者や、
怪獣を模した着ぐるみを着た怪しい輩が居たり、何だか随分と変人達と縁繋がりのある洞窟だった。
よもやこの洞窟の名前の由来はそこから来ているのではあるまいなと勘繰ってしまう。
奴らの同類と化してしまう前に、さっさとこんな洞窟抜け出てしまおう……。
 そうして繋がりの洞窟を抜けて三十三番道路に出ると、途端に雨が降り出して俺達を迎えた。
「この辺りは一度降り出したら当分やまねえ。さっさとヒワダの周辺まで走り抜けちまった方がいい」
 土地勘のあるデルビルの言葉に従い、俺達は雨の降りしきる木立の中を駆け抜けていった。

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