第42章


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「あーあ、思い知らせるどころか、かえって火を付けちゃったみたい」
 呆れた様に言い、ミミロップが傍に寄ってくる。
「ふん、あんな無鉄砲では長持ちはせんさ」
 体にこびり付いた煤を払いながら、苛立ちを抑えて素気無く俺は答えた。
「そう? ああいうタイプは一度燃え上がると、諦めが悪いのよー。私は、結構憎めないと思うけどな。
倒れたヒノアラシへの態度を見てても、根はそんなに悪い子じゃなさそうだったし」
 黄色帽子の姿に、何かを重ねてでもいるのだろうか。どこか微笑ましそうに、ミミロップは言う。
「悪い子じゃないだと? 奴は自分の力を誇示するためだけに我らを捕らえようとしたのだぞ」
「そこがまだまだ未熟なところ。でも、これから幾らでも変わっていくはずよ。
アンタだって、最初はひどいもんだったじゃない。私との初対面の時も、唐突に”俺の名前を言ってみろ!”
だなんて、どうしようかと思ったわよ。今は少しはマシになったと思うけど。違う?」
 ぐい、と俺の鼻先を指で押し、ミミロップはニッと微笑む。
「ぐぬ、別に、俺は何も変わっておらぬわ。そんな昔のことを持ち出すでない」
 手を払い除け、俺は不機嫌に顔を背けた。



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