第42章


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 しかし、火炎の車輪は突如としてコントロールを失ったように右左にぶれ始め、
俺がいる方から逸れて行った。そして、そのまま誰もいない岩壁へとぶち当たる。
轟音と共に火炎は弾け、中から目を回したヒノアラシが転げ出てきた。
ヒノアラシはしばらく右往左往した後、ばたんと糸が切れたように倒れて完全に気を失う。
 俺は思わず気抜けして、ぼんやりとその様を眺めた。
「うわ、大丈夫か! ヒノアラシ」
 ヒノアラシのもとに黄色帽子は駆け寄り、抱き上げる。
「くっそー、もう少しだったのになー。……だが、ま、よく頑張ったよな」
 黄色帽子はヒノアラシの頭をそっと撫で、ボールへと戻した。
「――他の奴らはポケセンに置いてきちまったし、今回は俺の負けだ。
だけど、次は絶対に負けないからな、覚えとけよ電気ネズミ!」
 振り向かずに黄色帽子は言い放ち、洞窟の外へと駆けて行った。
 ――もしも、あのまま火炎の車輪が剃れることなく向かってきていたら、
果たしてどうなっていたか。……どうせまぐれだ。だが、侮れん。
俺は、岩壁に残された、まるで隕石でもぶつかったかのように焦げて抉れた大穴を見上げた。


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