第42章


[20]無題


「やべ、体当たりで突き飛ばせヒノアラシ!」
 慌てて黄色帽子は指示を出し、ハッとした様子でヒノアラシは身構えた。
 だが、遅い――俺は尻尾に力を込めてぐるりと一回転、ヒノアラシの足元を払う。
足を取られ体勢を崩した所をもう一撃。二回転し更に勢いの乗った尻尾で、
火に覆われていない無防備な脇腹を殴りぬけるッ!
 確かな手応えと共にヒノアラシは大きく吹き飛び、鞠のように地を転げる。
「――ッ! ヒノアラシ!」
 叫ぶ黄色帽子を尻目に、俺は背中の火も消え失せて地に蹲っているヒノアラシに詰め寄ると、
手に電流を集めて見せ付けるように掲げた。
『ふん、弱すぎるな。お前も、無鉄砲でマヌケな主人も。レッドに近づく? ふざけるな。
この程度の力では、他のポケモンをただの踏み台としか見ぬ安い考えでは、
あいつには――レッドには何百年経とうが追いつけん!』
 見下ろしながら俺は吐きつけるようにヒノアラシに言う。握る拳の中で青白い光が
根っこのように蠢き、今にも抜け出したそうにバチバチと乾いた唸り声を上げる。
『ちょっと、ピカチュウ! さすがにそれはいくらなんでもやりすぎだって!』
 俺の行動に、黄色帽子だけで無くミミロップ達も騒ぎ始める。
 言われずとも、もとよりとどめを刺すようなつもりはない。ただの脅しだ。
少々やりすぎたような気もするが、ここまで心身ともに叩きのめせばこの思い上がった
黄色帽子と火ネズミの奴も、くだらん幻想は捨て去ることだろう。

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