第42章


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 煙を振り払い一喝する俺の姿を見て、黄色帽子は目をぱちくりとさせる。
「げ、あんな布切れで防いだってのか!? ……むむ、さすがレッドも使っているポケモン、
ちっちゃいくせに中々やるじゃんか。もう一度だ、気合入れろヒノアラシ!」
 力の差を見せ付けてやっても、まだ懲りない様子で黄色帽子は指示を飛ばす。
少し躊躇しながらもヒノアラシは命ぜられるままに再び火の粉を放った。
 俺は鼻で笑いながら再度払い除け、素早く奴らに向かって駆け出す。
「うわわ、寄せ付けんな! どんどん撃ち続けるんだ!」
 咄嗟に放たれた反撃を俺は即座に横に駆けて避ける。そのまま俺は駆け抜け、
愚直に後を狙って飛び来る火をジグザグに走ってかわし、岩を遮蔽物にして防ぎ、
急に跳んで方向を変え、奴らを翻弄し続けた。
「何やってんだよ、ヒノアラシ! ちゃんと狙えって!」
『やってるよ! でも当たらないんだ!』
 最初の余裕はどこへやら、見る見る黄色帽子の表情が焦燥に染まっていく。
闇雲に火の粉を吐き続けたせいでヒノアラシも息を切らし始め、
その火力も密度も油の尽き掛けたランプのように段々と弱まっていった。
 ぽふ、と情けない音と煙を出し、火が途切れた一瞬の間隙を縫い、
俺は一気にヒノアラシの懐へと詰め寄る。
ヒノアラシはぎょっとして糸のように細い目を一杯に開き、驚き竦んだ。


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