第42章


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「なになに、えーと、ピカチュウにデルビル……ありゃ、他の奴らには対応してねーのか。ちぇっ、
だから俺は最新の全国版の奴がいいって言ったのに、『初心者はまだジョウト版の図鑑だけで充分だよ』
だなんてウツギのおっさんもケチだよなあ」
 ぶつぶつと文句を言いながら、黄色帽子は図鑑を懐にしまい込んだ。
 さて、どうしたものか。このまま何もせずに立ち去るようならば、手出しは無用だが……。
「そーだ! こいつら捕まえれば、ウツギのおっさんも見直して、図鑑を全国版にしてくれるかもな。
へへ、よーし! やるぜ、ヒノアラシ! キキョウのバッジを楽勝で手に入れた俺達に敵はない!」
 得意げに笑みを浮かべ、黄色帽子は構えた。
 やはり、子供とはいえ、大半のトレーナーは我らに害なす者か。致し方あるまい。
『ミミロップ!』
 残党の男の時の様にモンスターボールをはたき落として封じようと、俺はミミロップに声をかける。
『ええ!』
 ミミロップも瞬時に応じ、飛び掛ろうとした瞬間、黄色帽子の背後から何かが飛び出してきて、
俺に思い切りぶつかった。不意の一撃に俺は突き飛ばされ、後ろに転げる。すぐに俺は体勢を直し、
襲撃者の姿を確認した。その正体は、背中に炎を燃え滾らせた黒いネズミのようなポケモンだった。
火ネズミは、気力充分な様子で地を掻きながら黄色帽子を守るように立ち塞がっている。
 この黄色帽子、ポケモンをボールから出して連れ歩いているだと――!?


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