第42章


[13] 


 人の気配を窺いながら俺達は林を抜け出し、岩壁にぽっかりと開いた繋がりの洞窟の
入り口へと向かう。途中、俺はどこか重苦しげな足取りで歩むデルビルにそっと視線をやる。
男の話を聞いてからというもの、デルビルは思い詰めた顔をして固く口を結んでいる。
 首謀者だという”ランス”という名を聞いた際に見せたこやつの動揺ぶりから察するに、
どうやらロケット団の残党も一枚岩では無いようだ。もしも、そのランスとやらに出くわした時、
一体こやつはどのような行動に出るか……今はまだ、首に括ってある縄は後ろ手に隠したまま、
泳がせられるところまで泳がせてみるとしよう。
「なにをそんな、目をとんがらせてワルーい顔してんの?」
 不意に横からミミロップが顔を覗き込んでくる。
「別に、どうもしておらんわ。目付きの悪さは昔からだ、放っておけ」
 俺はハッとして、不機嫌に顔を背けて言った。「ふうん」とミミロップは不服そうに唸る。
 まだ他の者にもデルビルの事は言わぬ方が良いだろう。特にこの短気は、正体を知った途端に
この場でデルビルを締め上げようとしかねん。今、そうしたところで、デルビルとて現状を把握しきれてはおらず、
ろくな情報を引き出せないだろう。言い逃れできぬ程、口に獲物――隠した真実を一杯に溜め込んだ時を見計らい、
一気に喉元を締め上げて吐き出させるのだ。それはさながら、人間のペリッパー飼い漁の如く、な。
「ねえ、さっきからピカチュウが何だか怖い顔してるけど、どうしちゃったの?」
 アブソルが心配そうにひそひそとミミロップに尋ねる。
「気にしちゃだめよ、アブソルちゃん。悪い子が移っちゃうわ」
 好き勝手言いおって……。

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