第41章


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「敵さんへの手がかりになるかわかんねえが、こっから南西辺りにあるヒワダタウンってチンケな町が、
何やら妙な事になってるらしくてよォ」
「妙な事?」
「電気ネズミの旦那は、ヤドンってぇポケモンは知ってるかい?」
 俺は、全身ピンク色をしたマヌケ面の四足獣を思い起こす。
「知っている。締まりのない顔をして、年中ボーっとしている奴らだろう」
 カントーで暮らしていた頃に見かけたことがあるが――一度、奴らの性分を知らずに会話を試みようとして、
随分と苛立たされたものだ――こちらにも生息しているのか。
「奴らがどうしたというのだ? 事件や荒事とはまったくもって無縁な、能天気の極みに座している奴らだぞ?」
「おう。ヒワダタウンは、そんな奴らにピッタリな何にもねえ穏やかな町でよォ。普段はヤドン共も町のそこら中で
一日中ボーっとしてやがるらしいんでぇ。だが、ある日、そのヤドン共が急に町中からすっかり姿を消した……」
「なるほど、確かにそれは尋常では無いな。奴らは敵を目の前にしても、ぼんやりとしているような奴らだぞ。
それが一斉に姿を消すなど……何か裏があるとしか思えん」



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