第41章


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「状況が状況だ。目的も告げずに付き纏おうとしてくるような相手を信用できるはずがあるまい。
それに、ひとの耳に急に齧りついてくる様な輩に好感を持てというのが無理な話だ」
 後は、奴と関わるたびに引き起こされるようになった妙な頭痛――。
「だから、その目的を聞き出すためにもロゼちゃんは一番適任だったでしょ。
耳を噛むくらいほんの些細なイタズラじゃない。私だって隙あらばしたいくらい――って、違う違う。
とにかく! もっと仲間を信用しなさい。こんな状況だからこそ、疑うよりもまず信じることが必要だと思うの」
「ええい、そう簡単に信じていてはその内足元をすくわれる!」
「疑ってばかりいたら何でもかんでも怪しく見えて、それこそ敵の思う壺だってば!」
 いつもであればそろそろこの辺りで引止めに入る役も、今は不在。アブソルやムウマージ、
ましてやデルビルでは務まるはずもなく、互いに譲らない平行線の言い争いは延々と続いてしまった。
俺も最早引っ込みはつかず、ミミロップも同様だろう。双方意見は言い尽くし、果てには日頃溜まった互いへの
些細な鬱憤にまで言及しそうになっていた時、上空から鳥でも獣のものでもない高く鋭い声が響く。
「うおーい! 電気ネズミの旦那ァー!」
 見上げれば、俺達の頭上で翼を広げ旋回する灰色の翼竜、プテラの姿があった。
十分に高度を下げると、プテラは広げた翼を大きくバタつかせながら、ゆっくりと俺達の前に降り立つ。
「また会えてよかったぜぇ、電気ネズミの旦那ァ。おおっと、ピカチュウの人生っと。
いやー、またあちこち飛び回されてくたくたでェ。まったく旦那はポケ使いの荒い――んん?」
 言葉の途中でプテラは俺とミミロップを交互に見やり、ばつが悪そうに翼に生えた爪でぽりぽりと頬を掻く。
「んー、どうも痴話喧嘩ってやつのお邪魔をしちまったみてぇで。わりぃなァ、おれっちどうもそういうのにゃ鈍感でよォ」
 俺は口を歪め、ぶんぶんと首を横に振るった。
「断じて違う。我らに痴話などありえぬ、ただの意見の相違による口論だ!」
 声高に俺は否定する。横でミミロップはムスッと表情を顰めた。
「ありゃりゃ、そうだったのかい。そいつァ重ね重ね失礼しやした」



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