第41章


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 ・

「もー、いい加減機嫌直してよ、ピカチュウ」
 宥めようとするミミロップの声を無視し、俺は口を硬く結んで押し黙り続ける。
裏切り者かもしれないマニューラを単独で追うなどというロズレイドの危険な独断を助長したあげく、
あろうことか止めに入ろうとした王たる俺を羽交い絞めにして妨害するなど、到底許せるものではない。
普通の悪を掲げる組織であれば即追放もの、いや、処刑されてしまってもおかしくはないだろう。
そうしない俺のなんと温情溢れることか。シンオウのリッシ湖とエイチ湖とシンジ湖を合わせて満たしても、
まだ溢れてくるに違いない。
 現に危惧した通り、いくら待ってもマニューラどころかロズレイドさえ戻ってくる気配は無い。
俺はじろりと横目でミミロップを睨む。
「ロゼちゃんなら絶対大丈夫。あんたがいない間に、ただ進化して体が大きくなっていただけじゃあない。
心身共にばっちり鍛えられて強くなったんだから。中々戻ってこないのは、きっとちゃんとマニューラに
追いつくことが出来たからよ」
「ちゃんと追いつけたのであれば何故すぐに連れ戻してこない。追っ手として返り討ちにされてしまったか、
あるいは言いくるめられて何か良からぬことを結託したか、最悪の結果しか想像できんな」
 苛立つままに言い返すと、ミミロップは呆れたように溜め息をつく。
「あの強情そうなマニューラを早々簡単に説得できると思う? 口にも顔にも殆ど出さなかったけど、
マニューラも何か悩んでたみたいだった。私の波動読みの実力じゃその理由まではっきりとは分からないけれど、
結構根深そうだったわ」
「ふん、あれが何かに思い悩むようなタマか?」
 奴のお得意な皮肉めいた不敵な笑みを思い返し、ありえないと俺はせせら笑う。
「あのねー、なんでそんなにマニューラを邪険にするようになったわけ? シンオウからの仲間じゃない」


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