第41章


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 積荷を枕に大いびきをかいている元飼い主の下っ端団員に、あっしは慎重に忍び寄ってベルトに付いた鍵束をそっと盗み取り、
檻の前まで戻って鍵を開けてやった。
 檻から出ると、そいつは体を解す様に呑気にぐっと伸びをする。
「いやー、助かったよ。やっぱり君は根はいい奴そうだな、ヤミカラス」
 マフラーに付いた埃をぱんぱんと手で叩いて払い落としながら、そいつは爽やかに笑いかけてきた。
「いい奴だなんて、虫唾が走るからやめやがれ。さあ、さっさとてめえの危なっかしいプランを実行しに行くぞ」
「ちょっと待ってくれ、騒ぎを起こしてしまう前にここで調べておきたい事があるんだが」
 不意に、そいつは言った。更なる面倒が舞い込んできそうな嫌な予感はしながらも、
あっしは「なんだ?」と聞き返しちまった。
「うん、少し前にここにうちのチビ助――もとい、ピチューの子が捕まえられて来なかったかな?
 見た目は俺を一、二周りか小さくした感じで、耳の形がもっと三角形で幅広なんだ」
「そんな感じの奴らなら、確か隣のフロアに捕まっているが。まさか……お前のガキか?」
「まあ、そんなもんだよ。普通のピチューより、無口で、無愛想で、生意気で、ジト目気味で、
全然懐かなくて、他人から見たらちょっと可愛くない奴だから、見さえすればすぐに分かると思うんだけど。
俺はその子を助けに来たんだ」

――「へえ、そのピカチュウ、子どもを助けるためにわざと捕まって潜り込んだのか。勇気があるというか、
無鉄砲というか……。同じ種族でも、慎重派に見えるうちのボスとはまるで似てないな」
 エンペルトは感心とも呆れともつかない口調でエンペルトは言う。
「ああ、あいつとの逃亡劇は今考えても無茶なことばかりで、休まる暇なんて殆どありゃしやせんでした。
だがよぉ、あいつがいればいつでもどんなことでもどうにか乗り越えられた。何でも出来るって気にさせられた――」 

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