第41章


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「確かにおめえの見立て通り、このアジトは組織とは関係がねえ堅気がやってる百貨店の地下の一部を、
騙くらかして借りているそうだ。汚い悪事に使われているなんて当事者以外は知りゃしねえよ。だが、それがどうした。
換気口から上の百貨店の方に抜け出て、大勢いる人間共に助けてくれって言いにでも行くのか? クハッ、笑えるぜ」
 あっしは呆れたように羽をひらひらと横に振るう。やっぱりこんな奴に少しでも期待したのが間違いだったのかと、
落胆しかけていた。
「ああ、その通りだ。人間達に助けになってもらう、という点では違いない」
「イカれてんのか? 俺様達の言葉なんて人間共には通じねぇ。取り合われないどころか、大騒ぎになっちまうのがオチだ」
「大騒ぎ、今に限っては好都合じゃないか。こんな所にこそこそと隠れてアジトを構えているような奴らが、
真っ当な買い物客や店員達が騒ぎ立っている中に表立って出てくるのを好むと思うかい? もし仮に現れたとしても、
人ごみを素早く潜り抜けて行くことに小さな俺達と大きな人間、どちらが向いている? このままここで何もせず腐っているよりも、
賭けてみる価値はあると思うけれどな」
 挑戦的な表情を浮かべるそいつ。
 示された目の前の道は、見るからに危ういとても細くて険しい最低にクソッタレなものだった。
だが、きっと先には違う明日がある。がむしゃらに危険を切り抜けていく日々は、誰かに生かされているのではなく、
己の力で確と生きているのだという実感を嫌というほど味わわせてくれるだろう。
「――その話、乗ってやる。マフラー野郎」
「おお、ありがとう! でも、俺の名前はマフラー野郎じゃあない。ピカ――」
「知ってるよ、確かぺカチュウだろ? 待ってろ、とりあえずまずは鍵をくすねてきてやる」
「ちょっと間違ってるんだが……まあ、いいか」

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