第41章


[11] 


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  話に一旦の一区切りをつけて酒を呷るドンカラスを前にして、エンペルトはその内容に少し動揺しながらも何とか整理して理解しようと頭を捻る。
「――ええと、つまり、ドンとマニューラはジョウトの出身なんだな?」
「……ああ」
 盃を飲み干し、ドンカラスは答える。
「聞いていて正直驚くことばかりだポチャ……。ドンも昔、人間のもとに、それもよりによって、あの悪名高いロケット団の所に居たなんて」
「あいつら、あっしの種族やズバットみたいな柄の悪い奴ばかり決まってコキ使いやがるでしょ?
その殆どが薄汚い裏の経路で秘密裏に養殖され、“道具”として仕入れられて、団員共に支給された哀れな奴らなんでさあ。その実、あっしもそのクチでやして……」
 ドンカラスは力無く苦笑して言った。
「……合法と非合法の違いはあれど、僕達は似たような境遇に生まれていたんだな」
「そういやおめえさんも人間の研究所生まれだったな。だからあっしら、気の合うところがあるのかもしれやせんね、クハハ。――話を戻しやしょうか。
 あっしが行かされたのは、ジョウト支部。碌な仕事も任されねえ雑用ばかりの下っ端も下っ端な団員のもとでやした。ま、そのおかげで、堅気の罪のねえポケモン達を痛めつけるようなひでえ仕事に、あっしが駆り出されることは殆ど無かったってのが不幸中の幸いってやつでしょうかね」
「マニューラもそうだったのか?」
「いんや、アイツぁあっしらみてえな養殖と違って、根っからの野生生まれ野生育ちでさぁ」
「そんな接点の無さそうな二匹がどうして出会った?」
「その辺は順を追って話しやしょう。事の発端は、商品として捕らえられ、カントーから密輸されてきたピカチュウ族達の一匹でやした。その日、あっしは下っ端のヤローに倉庫番を言い付けられていたんでさぁ――」


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