第40章


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「潮時か。ま、もう十分にシンオウからは離れただろうし、出してやっても良いぜ。
オレもこんな湿っぽい樽の中からなんて、さっさとオサラバしてーとこだったしな」
 ぱかりと蓋を開けてマニューラは俺を放り出し、続けて自らもひょいと樽から飛び出た。
「あ、ピカチュウ!もう、なんでそんなところに……え、マニューラ?」
 俺とマニューラの姿を見て、ミミロップはきょとんとした。
様子に気付き、ロズレイドや他の者達もぞろぞろと集まってくる。
「よう、ごきげんようテメーら。おっと、めんどくせーから先に言っておくが、オレはコピーなんかじゃねーぞ」

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「んで、積荷に紛れ込んで乗り込んでいたと」
「ヒャハ、そのとーり。この程度の潜入なんてちょろいもんよ」
「勘弁してくれよ、ドンの野郎にあんたはくれぐれ乗せねえように言われてたってのに。
ホエルオーの体力もあるし、ここまで来て今更引き返せねえぞぉ……」
 悪びれる様子の全く無いマニューラに、フローゼルは大きく溜め息をついた。
 あの時、俺達が旅立ちの準備をしていた時、洋館の廊下で二匹が何やら口論していたのは、カントーに行くことを反対されたことが原因だろうか。
「どうしてそこまでドンカラスにカントー行きを止められている?」
「……さーな。何かやましいことでも隠してるんじゃねーの?知ったこっちゃねー、そんなの」
 途端にマニューラは不機嫌そうに言葉を濁した。
「ま、まあ、いいじゃないですか。もう乗ってしまったのは仕方ないですよ。それに、マニューラさんがいてくれれば戦力としてとても心強いですし」
 疑念の目が集うマニューラをロズレイドが庇う。
「さっすがロゼ、話が分かるぜ、ヒャハハ。……ま、延々付き纏って迷惑をかけるつもりはねーよ。
オレもずっとテメーらのお守りしてるなんてごめんさ。オレにもオレの野暮用ってやつがあるからな」



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